"Pippa Passes"  (ピッパが通る、ピパ過ぎ行く)
原作者 Robert Browning

あらすじ
一年中働く少女ピッパの年に一日だけの休みの日に起こる出来事
感想
ちょっと宗教ぐさい点に好き嫌いがあると思われる作品。この宗教ぐさい所は、ブラウニングの作品である以上仕方がないところなので、大目に見てあげるべき。ちなみに、私のハンドルネームがPippaなのは、キリスト教徒だから、ではなく、このサイトを立ち上げたとき、この作品の訳しかなかったという理由による。
訳してみての感想
やばい。挫折する。
意訳度―B原文忠実度―B熱心度―B




 プロローグ

トレビザンのアソロにて。時は元旦。大きいがみすぼらしいがらんとした寝室。少女ピッパが絹くずのベッドから飛び起きる。


お日様ったら。
とっても早かったわ、
夜が過ぎるの。いよいよ待ち切れなくなったお日様が昇るわ。
綺麗な金色のお日様が、雲のお皿の
端っこから零れ落ちるの。
お日様の光ってねどんどん広がっていって、どこかで邪魔されるように思うわ。
東の果てに見える雲の
濃い灰色が遠くのほうで途切れていて
その合間に一粒の泡となって見えるからじゃないのよ。
日の出の漣が一つ、また一つと前の方からやってきて
完全に明けきるまで、邪魔されることなく
昇ってきて赤くなって、端っこのほうがちらちら光る
燃え盛るお日様の中心が金色になって、そして世界を包み込むからなのよ。(ピッパ注;要するに雲じゃなくてこの世界に太陽の光がさえぎられるとピッパは言いたいようですね。)

あら、嫌だ。お日様ったら。あなたの放つ光の漣のおかげで
何よりも大切な12時間のうちのちょびっと、使っちゃったじゃない。
あなたの眼差しときらめきのちょびっともよ。
(みんな言ってるわ。それはあなたの義務か、特別な贈り物だって。)
あなたが作ったものだけど、作ることが運命でもあるこの世の幸せもよ。
(神様ったらね、自分であなたに仕事させといて、あなたの光に夢中なのよ)
―ああ、お日様ったら。そんな天の恵みを無駄にしちゃったら
そしたらアソロ中で大恥かいちゃって、私、大損よ。

あなたの青くて神聖な長い時が、静かに広がって
そのおかげで、この世の中は助けられているのよ、そう
この世の中が一斉に待ち焦がれていた休みを満喫しているかのような
幸せがずっと満ちているのよ――
全部、私の物よ!だからって、裕福な人だって私のこと
思っちゃ駄目。どこにでもいる人
あなたがこの世に捨てるものは勿論、
あなたがくれるものまでも
素直に受け取れるっていう
恵まれた人だと思って頂戴ね。
だってね、お日様、もし、あなたが私を、ピッパをね、いじめちゃったら
昨日の晩、やっとなくなった、ずっと味わってきた悲しみが
また、明日になったら湧いてきちゃうからよ。
でもね、もし、あなたが優しいって分かってたら、私、借りたいわ
新年の夜明けに、一人ぼっちで昇って来てもさみしくない、あなたの強さを。
この大地の上に、毎日同じように生きている、
普通の人たちはね、みんな、
おぼろげな幸福を感じることで、つらいことに耐えているのよ
つまり、つらいことがあっても、別のことで幸せになることが出来るの
でもね、私にとっては、あなたはたった一つのお日様なの。この世の全ての物を
まるで天国の物であるかのように楽しませるために、神様が貸してくれた、たった一つのお日様なの。――
一年を通して私を助けてくれる唯一の光、それはまさに、あなた、お日様よ。
さあ、休日の始まりよ。アソロの四つの楽しみを楽しみましょ ――
朝、派手に着飾ってる、高慢ちきのオッティマさんに
雨が降るわ。果たして雨は、彼女の行動に
水を差すことが出来るかしら。二人が企んでいる間中
雨は激しく、彼女の生垣に囲まれた家の窓にうちつけるの。
でも、彼はギュッと彼女を抱きしめて、温かい息を
頬に吹きかけるわ。彼女、嵐に気づくことが出来るかしら。(ピッパ注;ご存知かもしれませんが、古典英語劇においては、前口上というものがあり、そこであらすじなどを解説するわけです。このプロローグでもそれをやってるわけです。)
そしてね、朝が過ぎてお昼のお日様が
ジュールスさんとフェーネさんの上に影を作るわ。でも、あの新婚ほやほやの人たち
相手のこと以外は見えなくなっておいでよ。今日結婚式を挙げたんだけど
教会への行きも帰りもずっと
手を絡ませあってるの。二人の間にはお日様が悪戯しちゃって、
暖かくて安らかな空気が流れているわ。
それだけじゃなくてよ。またまた悪戯しちゃって、霞で自分が沈むところを
隠しちゃうのよ。――ルイジーとお母さん、とっても悲しんでいたわよ。――
その母子はね、ルイジーが若い割には、お母さんが
年をとりすぎていて、ホント、不釣合いなのよ。本当よ。
温かくて、親身で、信頼できる町の人たちは、
天気が悪くなるとすぐに、その親子を
泊めてあげたわ。でもね、その人たちったら、夜、
また、嵐がやってきたら、ローマの総本山からアソロに伝道に来たと思われるほど
大司教さんのところで、余りにも忙しそうに働いて、
苦難から魂を解放できるくらい、貢献したのよ。
――だから、嵐になんか、この町の平穏を破ることは、出来なくてよ。そうでしょ?

原典 ― Pippa = Pippa passes / R. Browning ; traduit et preface par Paul de Reul (Collection bilingue des classiques anglais) (Collection bilingue des classiques etrangers)
出版者 ― Paris : Fernand Aubier
出版年 ― 1936
著者 ― Browning, Robert, 1812-1889
仏訳者 ― Reul, Paul de, 1871-1945
和訳者 ― Pippa

Copyright (C) 2004- Pippa
初版 2004年10月6日、最終更新 2004年10月6日


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