冒険者の足―自転車は赤兎馬鹿

自転車を盗まれた忌野清志郎もその自転車にオレンジ号と名前をつけていた。
これから長い距離を一緒に走ることになる愛車である。僕も名前ぐらい付けてやらねばなるまい。
どんなのがいいだろう。何せ、ママチャリだ。一応トリップメーター（別名サイクルメーターともいい、分かりやすく言えば自転車用速度計のこと）はつけたけれども、やっぱり所詮ママチャリだ。ロードレーサーでも、ランドナーでも、マウンテンバイクでもなく、ママチャリだ。分相応の名前をつけておかないと恥ずかしいことになる。

――キマグレ、ガンバ、グリック
僕の旅の原点かもしれないが、世代を問われるネタだ。しかも、中途半端だ。
――ママチャリ
スマートなロードレーサーも、渋いランドナーも、タフなマウンテンバイクも、ぶきっちょな俺には似合わない。ぶきっちょな俺にはどんくさいママチャリがよく似合う。・・・ごめん。自転車を熱く語ってしまった。

違う。こんなんじゃない。もっとインパクトのある名前。

――G. T. O.（グレート・ティーチャー・オオタ）
かなりの内輪ネタだ。不可の二文字はインパクト大。追試を受ける羽目になっちまったよ。ノーコメント。
――１、２、３位はケニア勢
確かにケニア勢は強かった。これ、インパクトあるね。
――阪神四連敗
ひどい日本シリーズだった。インパクトはあるけどこの旅の段階では、まだ無残な敗戦は喫していないんだよな。

違う。やっぱりこんなんじゃない。インパクトはなくていいからやっぱり分相応な名前がいいや。

――赤兎馬鹿（あかとばか）
これでどうだ！インパクトはないかもしれないけど、僕にぴったりの名前だ。

え？駄目？
でもこれくらいしか思い浮かばないもんね。あんたが代わりに考えてくれるのかい？

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