コンクリートアイランド



都心の再開発は、ある程度長い間繁栄した都市圏においては必ず必要となってくるものである。都市圏における活発な経済活動が生活環境を破壊し、それに耐えかねたお金持ちが郊外へ移住する一方でビンボーさんが都心に残り、あるいは流入しスラム街を形成する。一度スラム化が始まった都市では、税収の減少により公共サービスの質が低下し、さらに生活環境が悪化する。そういう悪循環が生じるからだ。ロンドン、ニューヨーク、デトロイト。これらは皆、都心の再開発で有名な都市だ。

不景気にあえいでいる日本で、景気浮揚策と都心再開発を兼ねた政策が実行されている。都心部での容積率上限を暫定的例外的に引き上げることで土地の収益性を高め、都心再開発を促進すると共に地価を上昇させるという政策だ。地価の上昇により景気を回復させ、都心再開発によりスラム街の形成を阻止するのが目的である。週間こどもニュース並みに乱暴に言ってしまうと、今までは景観保護のために四十階建てのビルしか建てられなかったところで、例外的に六十階建てのビルを建てられるようにする、という政策だ。こういう政策が施行されていればビルを建てたくなるし、新しいビルが建てば富裕層が流入するだろう、という魂胆だ。

その成果か、最近都心部での地価は上昇に転じたようだ。マンションの建設販売も好調であるらしい。

この都心再開発の一つの目玉が、東東京、お台場周辺の再開発である。
沿岸の都市再開発であるため、特別にウォーターフロント開発とも言う。東京湾をわざわざ埋め立てて作ったものの、土地がさばききれなかった島、お台場。再開発に、この島の浮沈がかかっている。



僕は、今、佃大橋を渡りそのお台場へ入ったところだ。建設中のビルが荒地の中虫食いのように点在する。コンクリートの無駄に幅広い道路と、その道路を超高速で行きかう大型トラック。しかし、人はいない。佃大橋を渡ると、そこには完全な無機質の世界が広がっている。

有明埠頭は近い。片側三車線の道路。その内二車線に延々とトラックが停めてある。左右には運送会社の車庫や倉庫がある。ガラスの破片がまきびしの様に散らばっている。パンクしないように気をつけながら、走る。廃墟のような光景。絶望的なまでに殺伐とした風景。しかし、都心部での人間の生活を確かに支えている、物流の拠点。

そんな文明の象徴のような道路を、原始的な自転車が走っている。僕が乗っている自転車だ。これからこの自転車で四国一周を目指す。バイクや自動車ではない。レンタカーでも電車でもバスでもない。この自転車で、自分の力で、四国を一周するのだ。徒歩、匍匐前進、逆立ち、三輪車を除けば、この世で最も原始的な手段で四国の一周を目指すのだ。

次回―質素倹約一千日

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四国三界一周十二日記

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